ホーム > 金融レポート

ニュージーランドの金融レポート

金融レポート 2012年5月

国内/海外経済

 3 月は強弱の材料が交錯した結果、方向感のない相場が続きましたが、4 月のグローバル経済はそこから負の方向に舵を切りました。
 米国の3 月のGDP 成長率は2.2%(年換算)と12 月に楽観論を引き起こした3.0%から再び下落しました。小売売上は改善しており、失業率も8.2%と順調に低下しています。しかし雇用環境は依然厳しく、産業生産も精彩を欠いています。結果として米連邦準備制度理事会(FRB)は慎重な姿勢を崩しておらず、その金融政策の行方が注目されています。
 スペイン問題は深刻化しており、S&P がソブリン格付を引き下げたことで市場をさらに刺激する結果となりました。失業率は昨年12 月の22.8%から3 月の24.4%まで急速に悪化しており、地方自治が進んだ同国の法制度により中央政府の財務管理能力が国家全体に及ばないなど歯がゆい状況となっています。10 年国債利回りはこうした状況を反映して再び6.0%を上回っています(債券価格は下落)。
 中国のGDP 成長率も失望要因となりました。3 月のGDP 成長率は8.1%(年換算)と12 月の8.9%から大幅に低下しており、事前予想も下回る結果となりました。2 月の貿易収支では力強い成長を続けてきた輸入に陰りが見えはじめたことを窺わせます。中国人民銀行は、中国人民元相場の対ドル許容変動幅の拡大を発表しました。これにより、従来一日に±0.5%の範囲内で変動が許容されていた人民元相場の許容変動幅が±1.0%に拡大されました。国内市場が成長拡大していく中での人民元高は時宜にかなっているでしょう。
 市場では世界経済の成長が脆弱な中で商品市況が及ぼす潜在的な影響について懸念する声が上がっています。しかし原油価格はここ2 ヶ月の間安定しており、インフレ懸念の低下とともに、各国の利上げ圧力は低下しています。
 3 月からの流れを引継ぎ、4 月のNZ ドル/米ドル相場は0.8100-0.8300 ドルの範囲でのレンジ相場となりました。注目すべき点は、月半ばに行われた世界酪農貿易(GlobalDairy Trade)のオークションで10%以上商品価格が下落したにもかかわらず、NZ ドルがこの水準を保ったことで、米国の財政問題等を反映した米ドルの弱さを象徴しています。
 ニュージーランド国内市場はNZ ドル安を伴わない国際商品市況の下落が一次産品輸出に及ぼす影響を懸念して、やや弱含みの展開となりました。震災復興に向けた工程表の進捗は依然遅れが出ています。物価は安定しており、目先のNZ 準備銀行による政策金利引き上げの公算は大きくありません。政府は2014-15 年までに財政収支を均衡させると明言しています。
 先月の欧州の債券市場はギリシャ救済のために政治家、金融市場関係者が弛まぬ努力を続けているかどうか、メディアが日々厳しく監視を続けた効果もあり、大きな変動もなくエンターテイメントに欠けた展開となりました。しかしながら実際には二つの大きな進展がありました。一つ目はISDAがギリシャ国債のリストラクチャリングがデフォルト事由に該当すると認定したことです。このことによりギリシャ関連の様々なCDSが決済されることが決定的となりました。二つ目はユーロ圏で将来的な加盟国のデフォルトへのさらなる備えと、構造問題を防ぐための措置として、440億ユーロのEFSFと500億ユーロのESMの統合が合意されたことです。しかしながらIMFでさえファンドの合計額が十分であるとの確信には至っておらず、未だに多くのことが不確実な状況は市場に悪影響を与えています。それにも関わらず、ギリシャ際の10年利回りは35%超から20%以下に利回りが低下しました(債券価格は上昇)。現在最も注目を浴びているのはスペインで、3月初めに4.85%だったスペイン国債の利回りは5.33%へ上昇しています。
 世界中で4 月にもっともパフォーマンスが高かったのは日本円で、US ドルに対して3%ほど値上がりしました。NZ ドル/円は3 月中旬に記録した69.10 円から下げ幅を拡大し、65 円まで4%ほど下落しました。これは日銀による10 兆円の資産買入れプログラムを含む追加緩和策の影響が大きいと見られます。市場に大量に資金を供給することで経済刺激効果を狙っており、一時的に円高にはなっていますが、将来的な円安要因になると考えられます。
 直近の米連邦公開市場委員会(FOMC)においてFRB が現在の極めて低いFF レートを2014 年後半まで継続する可能性について強調したことで、米国債利回りは低下しました。さらに米国の経済回復は相対的にゆっくりとしたペースで進むこと、国際商品価格の下落により中期的なインフレリスクが低下していることについて言及がありました。3 月中旬に2.40%まで上昇した米国10 年国債利回りは現在再び2.0%割れの水準となっています。
 ドイツ国債は深刻化するスペイン問題を嫌気した投資家からの買いが入り1.66%とさらに利回りが低下しました。スペイン国債利回りは3 月初旬につけた4.87%を下限として4 月中に数回6%を超えました。月末は若干落ち着きを取り戻し5.77%で引けています。スペインは苦境に立たされています。12 月から3 月にかけて失業率は22.8%から24.3%へと急上昇しており、中央政府の赤字削減案が未達成に終わりそうなことはほぼ確実となっています。また中央政府と地方自治体との軋轢が明らかになるなど、スペインはいまやヨーロッパ危機の主役の座を完全にギリシャから奪い去りました。
 ニュージーランドの長期金利も再び低下しています。4 月の10 年国債は4.3%をピークに現在は4%以下まで低下しています。米国債利回り下落の影響以外にいくつか国内要因が考えられます。まずニュージーランドの輸出の四分の一を占める酪農製品の国際価格が下落しています。昨年8 月のピーク時から35%も価格が下落しておりその影響は深刻です。クライストチャーチ地震からの復興計画は大幅に遅れています。さらにNZ 準備銀行から年内利上げ観測のメッセージが読み取れない中、先日豪州準備銀行は50bp の金利引下げを行っており、オーストラリアの経済軟化の可能性を示唆しています。